毛沢東風の葬式

久々に地震があった。やっぱり怖い。頻繁に地震があった頃(六七月頃?)は地震の夢を良く見た。けれどそれは、寝ている間に本当に地震があって、その揺れが夢の中で地震として表れたのかもしれない。変に地震慣れしてしまうと、寝ている時に揺れを感じても「面倒臭い」とそのまま寝てしまっていた。

二年前に見た夢。
行きつけの本屋に行くはずが、葬列に加わっている。随分と長い葬列で、列の先頭が見えない。誰の葬列なのか分からず、並んでいる人に聞こうとするが、皆暗い顔をして俯いているので、聞くに聞けない。そのまま、二日間歩き続ける。いつまで歩き続けるのだろうと思い始めた時、漸くセレモニーホールのような巨大なドーム型の建物に着く。ぎらぎらとした、いかにも金のかかっていそうなデザインで、葬儀場らしくないなぁと笑いたくなったが、不謹慎なので奥歯でかみ殺す。式場の入口で、神経質そうな背の高い男が整理券を配っている。「29」と書かれた整理券を係員に渡して式場に入る。祭壇は菊で埋め尽くされ、その上に赤い縁取りの毛沢東タッチでデカデカと描かれた遺影が掲げられている。どうやら、それは中年になった私の顔らしい。「自分の葬式なのか?」と信じられないまま棺に菊を納める番になって、棺の中を覗くと、そこに横たわっているのはやはり私なのだった。二重顎で皺も寄ってしまって、何だかなぁという気持ちで式場を後にする。帰り道、そういえば葬列の中に誰も知っている人がいなかったことに気付き、とても寂しくなった。

そういえば、夢の中の天気は晴れていることが多い。それも、雲一つ無い綺麗な青空。でも、雨が降る時は大抵洪水だったり、どしゃぶりだったりするし、雪だったらドカ雪だったり猛吹雪だったりして、要するに極端な天気だ。曖昧な曇り空ってのはあまり見ない気がするが、単に印象に残りにくいだけかもしれない。ある意味、性格がそのまま反映されているとも見れる。

夢に関する本を紹介。

『夢のかたち』(澁澤龍彦・編/河出文庫) 古今東西(主にヨーロッパ?)の「夢」に関する文献を集めた本。夢に関する実験や論文が胡散臭くて面白い。別の本で、日本の随筆集で「夢」に関する随筆だけを収録した本も面白かったが、書名を忘れてしまった。その中に、「色の付いた夢を見る者は神経が疲れており、臭いや味を感じる夢を見る者は気が狂っている」と書かれた古い随筆(論文かもしれない)があって、じゃあ毎日フルカラーで色んな食べ物を食っては「うめー」とか言っている夢ばかり見る私は相当ヤバイのか? 生まれる時代が間違っていたら狂人扱いにされたのかも……恐ろしや。

『審判』(西ドイツ・フランス 良く分からない) F・カフカの『審判』を映画化した作品。これも夢がテーマではないが、コントラストの高い白黒映像が白昼夢っぽい。3メートル位のデカイ扉や、長い長い影や、荒野に佇む無数の罪人(これはかなり不気味、皆在らぬ方を向いて無表情なのがさらに不気味さを増している)など、何だか空間が歪んでいる感じがする。ヨーゼフ・K役のアンソニー・パーキンスの神経質な演技がさらに不安定感を醸し出している。小説も面白いけれど、映画は映画で面白い(何度観ても飽きない、というか理解出来ない)。