両親と一緒に、実家の近くにある(ことになっている)大きな寺に行く。門をくぐると、小柄な中年女性が出迎えてくれる。両親が彼女に向って、それでは娘を宜しくお願いしますと頭を下げる。何事かと事情を理解できない私はぽかんとしていると、中年女性から、あなたは明日から出家し、この寺で修行するのですよと告げられる。そんな話は全く聞いていないのだが、もうどうすることも出来ないという空気が漂っている。両親は帰り、私は彼女について境内に入る。
 連れられた先は小さな一軒家で、中もごく普通の家だ。ここは出家される方が前日に泊る家で、ここで出家するにあたって心身の準備を整えるのだと説明を受ける。彼女はその世話役とのことで、どこか保母のような雰囲気がある。こうした環境に囲まれて生活するのも今日が最後なのかと、身の回りを見ながら考えてみるが、まだ実感が湧かない。この後に及んで、残してきた未読本を持ってくればよかった…と後悔している。
 世話役に呼ばれて、茶の間で剃髪する。鏡を見ながら、まるでおじいちゃんのようだと言うと、貴方のお爺さんはハゲていたのかと返され、いや私の祖父は髪がフサフサで中々良い男だったと答える。その間にも髪の毛は剃られ、頭が露わになるが、形がでこぼこしていてみっともない。一度ボウスにしてみたいと思ってはいたが、実際してみると似合わないなぁと冷静に自分の頭を観察している。この時点で、出家することにほぼ同意している。
 そういえば、会社に連絡しなければと思い立ち、携帯で連絡をする。電話に出た同僚に明日から出家することになったので、当分出勤できないと告げると、出家?! とかなり吃驚した声が返ってきて目が覚めた。

 久し振りに、出所の分からない「純粋な夢」たる夢だった。それにしても、本に対するこの執着は…我ながら呆れた。悟りへの道は遠い。