寺の門前町のようなところを歩いている。出店の影から突然巨大な鷲が飛び出し、顔の右側を爪で掴まれる。物凄く痛い。このままだと食われると思い、必死で殴ったり、爪をはがそうとする。長い時間格闘した末、どうにか撃退することに成功したが、顔の半分が千切れてしまう。痛いが、どうにか我慢できる。
 すると巨大な鷲は、鷲の姿を留めつつも人間に変身する。何となく、マフィアのボスといった雰囲気。「俺と互角にやりあえるとは気に入ったぜ、ちょっと来いよ」と、地下に通じる階段へ誘われる。断ったが執拗に誘うので、後に付いていく。
 階段を降りると、地下宮殿のような場所に出る。重厚な扉を開けると、鍾乳洞が広がっていて、ところどころに明かりが灯ったテーブルがあり、この世のものとは思えない怪物たちが座って酒を飲んだりしている。鷲男が私のことを紹介しているが、何と言われたかは覚えていない。

 やっと通常運転に戻った模様。

 南米あたりの荒涼とした赤土の土地を、貧しい労働者と共に歩いている。何かを採集しにいくらしい。とにかくカラカラに乾いていて、土埃が粘膜に絡んで辛い。しばらく歩くと、彼方に緑の大地が見えてくる。豆か何かの畑らしい。しかしそこは崖の下にある。
 崖の縁に着く。階段や下に降りるための機械があるのでは…と思ったが、そんなものはどこにも見当たらない。どうやって降りるのか、周りの南米人に聞いたら「飛び降りろ」とだけ。しかし、飛び降りて無事でいられる高さではなく、現に倒れて動かない人が崖の下に見える。中には崖にしがみつき、器用に降りていく人もいるが、所詮乾燥しきった土なので、大概は土が崩れて途中で落ちる。「何も考えずに飛び降りろ。大抵は大丈夫だから」と南米人に励まされ、意を決し飛び降りる。途中、こぶにぶつかるが、大した怪我はなく崖下に着く。
 あれだけ乾き切っていたのに、今は有機物の臭いと共に湿気が迫ってくる。緑の何かが密集しているが、何の植物かは分からない。植物なのかすらも分からない。その中で、大鉈を振り回して何かを採集している人達が見え隠れしている。とりあえず、畑ではあるらしい。畑(多分)に入って彼らに近付くと、黒いヘビを背中にしょった籠に放り込んでいた。採集しているものとはこれだった。その他、黒いトカゲ、ゴキブリ、黒くて大きな蟻などを採集するそうだ。自分には出来そうにないなと諦め、畑から出る。崖から飛び降りてくる労働者達が見える。
 そういえば、どうやって崖の上に行けばいいのか。うろうろしていると、何と階段状になっている場所がある。最初からこの階段で降りれば良かったんじゃないか…と拍子抜けしながら登る。でも、誰も降りてくる人はいない。そして、再び崖の上に辿り着く。
 猛烈に腹が減っている。向こうに、飲み屋のような建物があるので近づくと、やはり飲み屋だった。入ると、日系のような顔立ちの女性がいる。鍋にはおでんが煮えている。私のおばあちゃんから教わったんですよと彼女は言う。おでんと、テキーラで腹ごしらえ…してたら目が覚めた。

 治療はまだ続けているが、五時間睡眠では体が持たないので昼用の薬を飲んでから二度寝するようにしている。そうすると、やっぱり夢を見る。薬を飲んでも夢の内容は大して変わらない。上記ような「夢らしい夢」と「現実なのか分からない夢」を見る確率は五分五分なので、寝たくないけど仕方なく寝ている。

夢、しばし休業中

この半年ほど、主に仕事のストレスが原因でひたすら仕事の夢ばかり見、それにより精神的にかなり参ってしまったため、一月前から睡眠薬を飲んで治療している。
 薬の力は凄い。以前は十時間寝てもぐっすり寝た気がしなかったが、今は五時間ほどで十分になった。ほとんど夢を見ることもなくなった。
 しかし、寝ることを怯えずに済んだと喜ぶ一方で、夢を見られないことに対する不満…というか物足りなさを感じていたりもする。夢の世界は私にとって、あまりに日常的で、何か切り離せないものがあったのではないか、と今思うのだ。
 治療が終わったら、また夢を見たい。

 両親と一緒に、実家の近くにある(ことになっている)大きな寺に行く。門をくぐると、小柄な中年女性が出迎えてくれる。両親が彼女に向って、それでは娘を宜しくお願いしますと頭を下げる。何事かと事情を理解できない私はぽかんとしていると、中年女性から、あなたは明日から出家し、この寺で修行するのですよと告げられる。そんな話は全く聞いていないのだが、もうどうすることも出来ないという空気が漂っている。両親は帰り、私は彼女について境内に入る。
 連れられた先は小さな一軒家で、中もごく普通の家だ。ここは出家される方が前日に泊る家で、ここで出家するにあたって心身の準備を整えるのだと説明を受ける。彼女はその世話役とのことで、どこか保母のような雰囲気がある。こうした環境に囲まれて生活するのも今日が最後なのかと、身の回りを見ながら考えてみるが、まだ実感が湧かない。この後に及んで、残してきた未読本を持ってくればよかった…と後悔している。
 世話役に呼ばれて、茶の間で剃髪する。鏡を見ながら、まるでおじいちゃんのようだと言うと、貴方のお爺さんはハゲていたのかと返され、いや私の祖父は髪がフサフサで中々良い男だったと答える。その間にも髪の毛は剃られ、頭が露わになるが、形がでこぼこしていてみっともない。一度ボウスにしてみたいと思ってはいたが、実際してみると似合わないなぁと冷静に自分の頭を観察している。この時点で、出家することにほぼ同意している。
 そういえば、会社に連絡しなければと思い立ち、携帯で連絡をする。電話に出た同僚に明日から出家することになったので、当分出勤できないと告げると、出家?! とかなり吃驚した声が返ってきて目が覚めた。

 久し振りに、出所の分からない「純粋な夢」たる夢だった。それにしても、本に対するこの執着は…我ながら呆れた。悟りへの道は遠い。

 小学校の同窓会のような団体と、地元の隣町を散策しているらしい。何故か田んぼばかりの道を歩いている。季節は春先、雪の溶けた田んぼに枯れ草が揺れている。
 しばらくすると、田んぼのど真ん中にとても大きな桜の木が見えてくる。しかも既に満開で、その迫力に圧倒される。皆でその桜をバックに記念撮影しようという流れになるが、その土地が誰のものか分からないので一応確認をとってからにすることになる。近所の人に聞くと、駅で所有している土地とのこと。同窓会メンバーに駅職員がいたので、彼が電話で立ち入りの許可を取る。
 許可を得て、桜の前に皆で並ぶ。桜は本当に大きくて、一つの小山のようにすら思える。今の時期に咲いていたら、春になったらもう散っているだろう…と思うと、少し惜しい気持ちになる。

 久し振りに、幸せな気持ちになった夢だった。

 南米のスラム街のようなところに、東京ドーム数個分はあろうかという規模のオリンピック選手村がある。選手だけでなく一般の人も利用でき、施設の種類も、ホテルやジム、レストランにショッピングセンター、イベントホールなどがあり、オリンピック終了後は民間に譲渡される予定であるらしい。建物内部は青を基調としていて、間接照明のため仄暗く、無機質的なデザインが近未来SFを彷彿とさせる。
 私は職場の人とそこに泊ることになっているが、実のところ一緒に泊るのは気が進まない。部屋まで一緒で、尚且つベッドも一緒なのでうんざりしてしまう。ベッドは青基調の中にあってけばけばしいオレンジ色で、縦十メートル横五メートルもある巨大なものだった。しかも、このベッドは隣の部屋の人との共用なのだ。端に寝れば少しはプライベートが保たれるだろうか…と思うも憂鬱になる。
 そのうち、トイレに行きたくなって探すが部屋にはなく、廊下に出てもあるのは男子用だけで、女子用は案内が出ているものの廊下は複雑に枝分かれしていてどちらに進んだらいいのか分からない。押し寄せる尿意を堪えながら、何とかトイレを見つけるが、そこにはすでに車いすに乗った人々の列が出来ていて、すぐに入れそうな気配はない。
 (前の場面とは変わって)今度は施設の外にいる。ハイテクを駆使した選手村内部とは対照的に、朽ち果てた家々、埃臭い異臭、そして薄汚れどんよりした眼の住民たちが憎らしげに選手村を見ている。彼らは選手村の華やかさからは遠ざけられた存在である。そんなものに囲まれ、燦然と輝く選手村は何だか蜃気楼のように思えた。

 実家(東北の田舎)に帰っている。実家から五分ほど歩くと、すぐ田んぼに出るのだが、そのずっと向こう側に黒い雲が三つ等間隔に浮かんでいる。そばにいる父が、「あれがいわゆる『ゲリラ豪雨』を引き起こす雲だ。あの下では今豪雨になっている」と言う。しかも、真ん中の雲は竜巻らしい。青空と黄金色の田んぼの美しい風景の中に浮かぶ雲は、何だかマグリットの絵のようなシュールさを醸し出している。
 しばらくして、実家のすぐ近くで竜巻が発生する。道路一本挟んだ向こう側が竜巻に見舞われる。音はないが、巻き込まれた家々が木端微塵になり、塵が風に乗って私たちの住む町に流れてくる。この塵の中に、巻き込まれた人の細胞が紛れているかもしれない…と思うと、息をするのが怖くなる。