実家(東北の田舎)に帰っている。実家から五分ほど歩くと、すぐ田んぼに出るのだが、そのずっと向こう側に黒い雲が三つ等間隔に浮かんでいる。そばにいる父が、「あれがいわゆる『ゲリラ豪雨』を引き起こす雲だ。あの下では今豪雨になっている」と言う。しかも、真ん中の雲は竜巻らしい。青空と黄金色の田んぼの美しい風景の中に浮かぶ雲は、何だかマグリットの絵のようなシュールさを醸し出している。
 しばらくして、実家のすぐ近くで竜巻が発生する。道路一本挟んだ向こう側が竜巻に見舞われる。音はないが、巻き込まれた家々が木端微塵になり、塵が風に乗って私たちの住む町に流れてくる。この塵の中に、巻き込まれた人の細胞が紛れているかもしれない…と思うと、息をするのが怖くなる。