南米のスラム街のようなところに、東京ドーム数個分はあろうかという規模のオリンピック選手村がある。選手だけでなく一般の人も利用でき、施設の種類も、ホテルやジム、レストランにショッピングセンター、イベントホールなどがあり、オリンピック終了後は民間に譲渡される予定であるらしい。建物内部は青を基調としていて、間接照明のため仄暗く、無機質的なデザインが近未来SFを彷彿とさせる。
 私は職場の人とそこに泊ることになっているが、実のところ一緒に泊るのは気が進まない。部屋まで一緒で、尚且つベッドも一緒なのでうんざりしてしまう。ベッドは青基調の中にあってけばけばしいオレンジ色で、縦十メートル横五メートルもある巨大なものだった。しかも、このベッドは隣の部屋の人との共用なのだ。端に寝れば少しはプライベートが保たれるだろうか…と思うも憂鬱になる。
 そのうち、トイレに行きたくなって探すが部屋にはなく、廊下に出てもあるのは男子用だけで、女子用は案内が出ているものの廊下は複雑に枝分かれしていてどちらに進んだらいいのか分からない。押し寄せる尿意を堪えながら、何とかトイレを見つけるが、そこにはすでに車いすに乗った人々の列が出来ていて、すぐに入れそうな気配はない。
 (前の場面とは変わって)今度は施設の外にいる。ハイテクを駆使した選手村内部とは対照的に、朽ち果てた家々、埃臭い異臭、そして薄汚れどんよりした眼の住民たちが憎らしげに選手村を見ている。彼らは選手村の華やかさからは遠ざけられた存在である。そんなものに囲まれ、燦然と輝く選手村は何だか蜃気楼のように思えた。