出勤直前、制服に着替えてロッカールームから出てタイムカードを押しに行こうとするが、そんな意志とは関係なしに、足はビルの外へと向かう。このままだと遅刻してしまうと焦るものの、足は止まらずどんどん外を歩いて行く。歩きながら、「そういえば、職場はこっちの方にあるから大丈夫だった」と思い直すが、遅刻には変わりないので、上司にどう言い訳しようか考えている。
 本来ならば歩いて一分もかからず職場に着くはずなのに、一向に着く気配がない。気が付けば、見慣れない道を歩いている。道沿いにある家の庭樹が紅葉していて綺麗だ…とうっとりするものの、焦りは募る一方。
 そのうち、横丁のようなところに入っている。店はどこも閉まっていて、良く見たら横丁というよりイタリアの市場をイメージしたテーマパークのようなところで、道のどん詰まりには人形劇の小劇場がある。薄暗い舞台に、日焼けしたマリオネットがだらりとぶら下がっている。
 横丁を出ようとするとイタリア人らしき白人女性二人に声をかけられたので、道に迷ってしまったと身振り手振りで伝える。じゃあ、私たちが行先まで送って行ってあげるよと彼女たちは言うのだが、私はその行先がどこにあるのか分からない。ふと、この近くに母校の中学校があったのを思い出したので、とりあえずそこまで連れて行ってくれるよう頼む。しかし、すぐ近くにあるはずの中学校は、見晴らしの良い高台からいくら眺めても見つかりはしなかった。

 風景は映画のように美しいのに、不安で堪らない夢だった。