目を覚ますと(目を覚ましたところから始まる夢だった)、保健室のベッドで寝ていた。身体を起こそうとすると、ベッドの周りに色んな人が集まって私の顔をじっと見ている。極めて深刻な、嫌悪を含んだ目でじっと見つめている。どうしてこんなところで寝ているのか、ここはどこの保健室なのかを知らないことに気付き、その旨を尋ねると、「何も覚えていないっていうのか」と返される。そうだと答えると、信じられないという顔で次のようなことを言われる。「あなたは、授業中に突然前の人をナイフで刺したんだよ。刺された○○さんは亡くなった。本当に覚えていないのか?」
 自分が人を殺したと言われ、酷く動揺する。本当に自分がそんなことをしたのだろうか…でも、いくらその時のことを思い出そうとしても思い当たる節がなく、そもそもここで目覚める以前の記憶がすっぽりなくなっている。でも、私がその殺人を犯したのは事実らしい…。一瞬想像した「ナイフで人を刺す」シーンが本当の記憶のように思えて、頭が混乱する。
 警察が来て、事情聴取を受ける。いや、本当に自分はやっていない、それ以前にここがどこなのかも分からない…ということを、必死になって訴える。警察官は「今は混乱しているようだから、落ち着いたらまた話を聞きます」と言い帰っていく。私は授業を受けるよう、教室に戻される。
 美術の時間だったようで、生徒は風景画のようなものを描いている。私が教室に入ると、皆一斉にぎょっとする。それはそうだ、私は殺人犯なんだからなぁ…と変に納得しながら、私の席らしき空席に腰を下ろす。高校時代の同級生が、引きつった笑顔で「もうなんでもないの?」と尋ねてきたので、「自分でも良く分からない」と答える。周りの視線が突き刺さって、いたたまれない気持ちになりながら、自分の過去を必死に思い出そうとしているうちに目が覚めた。

 記憶喪失になった時の不安感って、こんな感じだろうか。自分の足場がなくなってしまったようで、それが何より苦痛だった。久し振りに「悪夢」と言える夢だった。
はてな夢日記