南米のアンデス山脈辺りに住んでいる少数民族のある一族に嫁入りする。原色の派手な刺繍が施されたポンチョを着せられ、「これでお前も私達一族の人間だ」と言われる。結婚相手は三十代位の、小柄だが日に焼けたがっしりとした体躯の男だった。新婚の私達は一族の住むテントとは別に設けられたテントで過ごすことになる。しかし初々しい雰囲気はなく、結婚して十年以上経った中年夫婦のような、覇気のない新婚生活を送る。幾日か経ったある夜、使いの子どもが私の弟の死を知らせにくる。事故で死んだと言う。私は遺体が安置してある病院に行かなければならない、と夫と夫の家族に言い、自転車で山を下ろうとする。だが、山道は自転車のタイヤの幅ギリギリの幅しかなく、しかも片側は底が見えない程の崖で、夫の一族総出で「行くな、お前も死んでしまうぞ」と止められるが、私はそれでも下ると言って譲らない。まるで命綱なしの綱渡りのような、死にそうな位に緊張しながら道を下ると、いつの間にか日本の高速道路を走っている。パトカーが並走してきて、中の警官に「危ないから止まれ」と言われるが、「弟が死んだんだ、急いでいるんだ」と言ってパトカーを振り切る。
 夜中、弟の遺体が安置されている病院に到着する。すでに院内の明かりは消えていて、私は病院の緊急出入り口から中に入る。中も真っ暗で、暫くさ迷うが、霊安室は見つからずやむなく外に出る。すると、螺旋階段にぶら下がった男女の死体を見つける。二人の体は異常に白い。