断片

久方振りに。
・バスに乗っている。周りは若手お笑い芸人だらけだが、ひっそりとして、何だか辛気臭い。バスが高い鉄格子の塀の前を走っている。塀越しに、オレンジ色の服を着た外国人がこちらを向いて立っている。覇気のない、虚ろな目で私達を見ている。そこは刑務所で、彼らは囚人だった。囚人の一人が、看守数人から殴る蹴るの暴行を受けている。こちらを見ている囚人達は、「助けてくれ」と言葉ではなく目で訴えてくる。しかしバスは何事もなかったかのように刑務所を通り過ぎて行く。車内の雰囲気はますます辛気臭くなる。
 バスは船着場に着く。私達はこれから沖縄に行くのだ。木で出来た船に揺られて沖縄を目指す。その途中、お笑い芸人の一人に「チャンプルーって、どんな料理だ」と訊かれ、「要するに炒め物だよ、だからとりあえず炒めればチャンプルーになるよ」と答えたが、相手は不満げな顔をする。着いた先は茶色い岩があちこちにある砂浜だった。私が岩に足をかけようとすると、岩はもぞもぞと動く。岩だと思っていたのは茶髪の外国人で、ギロリと私を睨んだ。彼らは一様に猿のような顔をしていた。砂浜では私が乗ってきた船とは別に、ガソリンの入ったコンテナーを積んだ船が浜に荷を降ろしているところだった。作業をしている男があろうことか煙草を吸っている。「爆発するぞ!」と私は怖くなって、出来るだけ遠くに逃げようとする。作業員の煙草の火が、コンテナーから漏れたガソリンの上に落ちたらしい、浜辺の方でも大騒ぎをしている。皆一斉に逃げる。と、物凄い爆発音と共にコンテナーが爆発炎上し、辺りに鉄片が飛び散る。
・実家に帰る。すると、母が慌しく家の中を動き回っている。どうかしたのかと訊くと、「この子がオリンピックに出るから、その仕度をしているんじゃいか」と言う。二階の弟の部屋から、上戸彩が下りてくる。私の妹らしい。手にはテニスのラケットを持ち、何だか不機嫌そうである。彼女はそのまま玄関を出て、母の車に乗り込む。母はバーベキューで使うような折りたたみ椅子やらテーブルなどを抱えている。そんなもの、何に使うのだろうと私は不思議に思う。
・駅構内で一匹の茶トラの雌猫に会う。猫の口周りは真っ赤な血で染まっている。「これはね、決闘の痕なのよ」と猫が喋る。「いわば、ナイフで一突きにしたようなものかしら」と喋る猫の眼がピカピカ光るのが恐ろしい。私はその場を逃げ出して、離れた所にいた友人に、「猫が喋ったんだ」と言うが、「バカ言うな」の一言であしらわれてしまう。