断片

夜、駅に続く通りを自転車で走っていると、空に彗星が三つ見えた。すれ違ったカップルは綺麗だと騒いでいるが、その彗星は非常に大きく緑色に輝いており、綺麗だったが何だか禍禍しかった。あれが地球に衝突して世界が終わるんだろうと考えながら、私は駅ビル内の映画館に入る。上映室は粗末なベンチが並べてあるだけの汚い部屋で、蒸し暑く何か臭う。不愉快な気分で座っていると、映写室から高校時代の級友が出てきて、落ち着きなく一頻り喋ると、すぐ映写室に戻っていく。暫く経って映画が始まったが、それは私が観たかった作品ではなく、ポルノ映画で、しかも私は一度それを観ていた。前のベンチに座っている中学生位の少年(恐らく兄弟)が、やたら興奮していて煩くて、ベンチごと蹴り倒したくなる。私の隣に、眼鏡をかけた真面目そうな女子高校生が、映画の内容が不快だという顔をして座っている。手には、数学の参考書が握られている。私が持っていたのは、古臭い本だった。
ニュースで、韮畑でミステリーサークルを作ろうとした男が逮捕されたという報道を見ている。韮畑は中年男性の顔のように切り込まれている。誰かが、「ナベツネみたいだ」と言うのが聞こえる。