雪深い渓谷を歩いている。私は人を殺し、死体をポリバケツに詰め、それをどう始末しようかと考えている。しかし私の他にも連れがおり、連れはポリバケツの中身を知らない。でも、薄々感づいているらしく、「そのバケツには何が入っているんだ」と時折訊いてくる。その度に私は「キムチが入っているから、冷たい所に置かないと駄目なんだ」と答えているが、回を増す毎に連れの私に対する疑念は深まっているようだった。
 そろそろ死体を始末しないと連れが警察に通報してしまう、いやもう既にしているのかもしれない、そんな考えで頭が一杯になり、私は連れを引き離して一人で渓谷を歩いていると、目の前に雪がすっかりない穴が見えた。穴だと思ったら、それは深い深い湖で、群青色の水が波打っていた。ここに捨てよう、ここなら浮かんでくることもないだろう、そう思っていざ捨てようとした時、連れが何をするんだ、それを捨てるんじゃない、と叫びながらこちらに走ってくる。私は焦って、死体入りポリバケツをドボンと湖に投げ込む。漸く追い付いた連れは、「今何を捨てたんだ、私は全て知っているんだ」と早口で捲し立てながら迫ってくるが、証拠を処理し終わった私は強気になっていて、食って掛かる連れを笑いながらあしらう。