母校の小学校に来ている。校舎は私が通っていた頃に建て替えられ、当時の田舎の学校にしては最先端の設備を備えていたのだが、しばらく振りに訪ねたら更に進化している。四階建てだった校舎は九階建てになっており、螺旋状のエスカレーターが校舎の真ん中を貫いている。実験室や実習教室はガラス張りになっている。いたる所にメッキを施された鉄骨がむき出しになっている。校舎というよりSF映画に出てくる何かの基地のようである。
 この頃は地域に根ざした学校を目指しているらしく、生徒以外にも色んな人が自由に校舎の施設を利用出来るようになっている。便利な時代になったけれど、ここにはあの頃の面影はもはやないと、私は少し落胆している。最上階まで見てから、螺旋のエスカレーターで一階に戻る。
 すると、昇降口付近に沢山人がいる。近づくにつれ、そこが土産屋のようになっていることが分かる。そして、そこで話されている言葉は全く耳慣れない、理解できない言語であり、人々の顔立ちも日本人と似ているようで若干違っていることに気付く。外に出ると、近代的な建物は古びた土臭い平屋建てに変わっている。
 私は、タイに旅行に来ていたことを思い出す。お土産を買わなければと土産屋の店員に話しかけようとするが、タイ語が分からないのでどうしたらいいのか右往左往していると、店番の老人が片言の日本語で話しかけてくる。昔日本軍に占領されていた時に教えられた日本語をまだ覚えているのだという。でも、通じているようで通じていない感じがして、心許ない。旅行に来る前に、少し勉強しておけばよかったと後悔する。結局、何故か売られていた英国産のショートブレットの箱を掴んで会計しようと思ったところで目が覚めた。