大学構内を散歩している。もうすぐ卒業するので、行ったことのない区画を歩いてみようと、木造の旧校舎に向かう。そこは天井が低く、腰を屈めないと歩けない。すれ違う人は皆、子ども程の背丈しかなかった(でも大人なのだ)。
 旧校舎と新校舎との渡り廊下の真ん中には、「伯爵亭」という喫茶店がある。上品な双子の老婆がやっている古い喫茶店で、大抵教授たちがコーヒーを飲んでいる。今まで入りたくても入れなかった店で、卒業するのだからもうここにも来れないかも知れないと、思い切って店の扉を開ける。
 店内はアンティーク調の家具が揃えられ、琥珀色の明かりにほんのり照らし出されている。クラシックが流れていて、まさに理想の喫茶店。老女に案内され窓側の席に着くと、店自体が半地下になっているのか廊下を行き交う人達の足元がちらちら見える。
 メニューに書かれていたのは数種類のコーヒーだけだった。何か軽食も食べたかったのでそう尋ねると、「うちはお客様の雰囲気に応じて軽食をお出ししていますので」と言われる。どんなものが出てくるのだろう…と楽しみにして待っていると、運ばれてきたのはブレンドコーヒーと、真っ黒いしいたけの煮物だった。
はてな夢日記