暗いホールの、ステージに程近い辺りに座っている。ちゃぶ台の向こう側には、新聞を読む五十代位の小太りの男が座っている。彼と私(も四十代位になっている)は内縁関係にある。彼の方から何度か結婚を申し込まれたが、私は承知しない。彼は知識はあるが、神経質で卑屈でそのくせ尊大であり、思いやりがなく仕事もろくにしない、(私にとって)最低の男なのだ。本当は今すぐにも別れたいのである。
 しかし、その日男は役所に勝手に婚姻届を提出したため、私達は法律的に夫婦になってしまった。そのことを告げられ、いよいよこの男といるのが嫌になった私は、男が留守にしている隙に家出する。鞄に服、キャリーバッグに本を詰め、コートを着て毛糸の帽子を目深に被り(冬だったのだ)、出奔する。
 家から十分程歩いたところで、キャリーバッグを忘れてきたことを思い出す。取に戻ろうかと思ったが、男が帰ってきていたら計画が水の泡になると、泣く泣く諦める。暫く歩くと、公園のような場所に出て、子犬が二匹走り回っている。そのうちの一匹が私にじゃれ付く。近くに、子犬の飼い主らしき中年女性がいる。

 起きた時は何と言うことのない夢だと思っていたが、今こうして書いてみると最近の心境がそのまま表れていて驚いた。
 一時期記録できる程鮮明で持続する夢を見なかったが、この頃は以前のように鮮明な夢を多く見る。先日「夢について」の講義の中で、夢日記を付けると夢を見る頻度が増すという話を聞いたが、その効果によるものなのか。もしくは、見る夢の大半は不安夢なので、不安定な状況に置かれた時に夢を見る頻度が増すのか。意外と外的要因に左右されるらしい(はてな夢日記)。