友人と二人でカフカの『変身』*1を演ずることになり、新幹線に乗って遠い地へ赴き、夜遅くにホテルに着く。別々の部屋にそれぞれ泊まる。私は、ベッドにもぐり寝る体制になりながら、「これで明日の朝、何かに『変身』していたら、それこそザムザだよなぁ」(私はザムザを演じるのだ)と思い、眠りに付く。
 翌朝、体の火照りで目が覚める。何だろう、と起き上がってみると、どうも体の具合がいつもと違う。顎にいつもと違う空気を感じるので手をやると、髭が生えていた。「何だコリャ?!」と吃驚して鏡を見ると、私は髭もじゃの男になっていた。「本当に『変身』してしまったよ!」と友人の部屋に駆け込む。友人も多少吃驚しているものの、寝起きのせいかまだ事態を飲み込めていないらしい。私はもう一度、鏡を見る。そこにいるのは先程と同じく、髭もじゃの男だったが、よくよく見ると女だった頃の面影も見て取れるので、少しほっとする。
 …というところで目が覚める。私はまだベッドの中だった。慌てて顎を触るが、髭はなく、鏡を見てもいつもの私の顔だった。友人が起きてきたので、「今正に『変身』する夢を見たよ」と笑いながら話しかける。

 というところで目が覚めた。今度は本当の目覚めだった(多分)。最近カフカばかり読んでいるから、こんな夢を見るんだろうなぁ。

*1:フランツ・カフカの代表作。主人公グレーゴル・ザムザがある朝目覚めると、彼は巨大な虫になっていた。悪夢のような不条理小説